新聞記事から

2010年9月 2日 (木)

特許裁判  高コレステロール血症治療薬と後発薬

生徒:
2010年7月1日の日本経済新聞などに、
「塩野義製薬は、6月30日、アメリカの後発薬メーカー8社を提訴していた高脂血症治療薬クレストールの特許訴訟に関して、米国の地方裁判所が、クレストールを保護する再発行特許が2016年まで有効であるとする勝訴判決を行ったと発表した。」
「クレストールは塩野義製薬の主力製品で2010年3月期には500億円のロイヤルティー収入があり、その4割が米国分と見られる」
という記事がありました。
ここで疑問点なのは、
 ① 特許の期間内に後発薬の発売申請をして、後発薬メーカーは成算はあったのか?
 ② 再発行特許の修正点と、再発行する理由は?
 の2点ですけれど。
まず最初に、クレストールの特許と販売に関する年表を作ってみました。

               表1 クレストール関連の年表
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1991/07/01    特開1993-178841 の優先日
1992/05/28    特開1993-178841 を出願  (1993/07/20公開、 1991/07/01優先日)
1992/06/12    US-5260440  を出願          (1993/11/19公開 )
1993
1994
1995
1996
1997
1998/08        RE37314  を出願       (US-5260440の再発行特許)
1999
2000
2001
2002
2003/08        米国で販売開始
2004
2005/04         日本で販売開始
2006
2007
2007/12         アストラゼネカと塩野義製薬、後発品申請7社を提訴
2008
2009
2010/06/29    後発品メーカー7社敗訴    (販売は2016年以降に)
2016      特許満了日
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先生(医薬も特許も素人):
2010年6月29日の判決がネットに出ています。
In The United State District Court for The District of Delaware 
http://www.ded.uscourts.gov/JJF/Opinions/Recent/Jun2010/08-1949.pdf

目次を表2に示します。

         表2 米国デラウェア地方裁判所(2010年6月29日)の目次
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  原告: アストラゼネカ社(販売社)と塩野義製薬(特許所有者)
  被告: 米国FDAにクレストールの後発薬の製造、販売を申請した後発薬メーカー8社
                  
                    背 景
p.03   Ⅰ 原告と被告
p.04   Ⅱ 特許(US-5260440特許とRE37314特許)の概略

                    考 察
        Ⅰ 権利侵害
p.06       A 原告と被告の主張
            B 被告の1社 Apotex社について
        Ⅱ 訴訟資格
p.13       A 原告と被告の主張
p.14       B 訴訟資格の法的原則
p.15       C アストラゼネカ社に訴訟資格があるか
        Ⅲ 不正行為
p.17       A 原告と被告の主張
p.18       B 不正行為の法的原則
p.23       C 440特許の取得に不正行為があったか   
        Ⅳ 自明性
p.30       A 原告と被告の主張
p.34       B 自明性の法的原則
p.35       C 314特許は自明で無効か
     Ⅴ 再発行
p.37       A 原告と被告の主張
p.38       B 特許の再発行の法的原則
p.40       C 314再発行特許に不正があり無効か

p.44                                    結  論

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生徒:
これを読むと、後発薬メーカーの主張は主に以下の3点です。

① 440特許の不正行為
塩野義製薬の出願当時の特許部のキタムラ、シバタ、タマキの3氏は、先行する重要なバイエル社の特許とサンド社の特許を知りながら隠して440特許を出願した。
② 再発行特許の不正行為
440特許ではサンド社の特許を包含するように広範囲の請求をし、また競争を妨害するためにロスバスタチンのカルシウム塩(クレストールの有効成分)がもっともコレステロール低下作用が強いことを知りながら意図的に請求項に入れず、後日の再発行特許で、ロスバスタチンを請求項(6-8)に加え請求範囲を狭めた。
③ 自明である
440特許と314特許は専門家であればSandoz社の特許から推測できる。

とあります。(サンド社などの特許番号の記載はない)

先生:
440特許の請求項には、一般構造式(図1の上図)が示されて、具体例のロスバスタチンの構造式(図1の下図)はありませんでした。
再発行特許では、440特許の1~5の請求項に、新たに、6 ロスバスタチンの塩、7 そのナトリウム塩、8 そのカルシウム塩、の3個の請求項を足しました。

Cresutor0002

しかし、440特許でも、実施例の第一にロスバスタチンのカルシウム塩(クレストール)が入っているので、隠して競争を阻害したとはいえないとの判決はもっともです。
原告は最終的にクレストールがもっとも有効であることがわかったので、その情報として440特許を修正した、と主張しました。
米国の特許制度について、以下の資料で簡単な知識が得られます。
米国特許Overview  http://www.sankyo-pat.gr.jp/PDF/20081102_text_usp_Overview.pdf
後発医薬品参入と特許ー日米韓の比較 
http://www.harakenzo.com/jpn/bio/20090414.html
米国特許修業記 http://uspatentshugyoki.blog27.fc2.com/blog-entry-21.html

生徒:
これでほぼ疑問点は解決しました。

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